ロスト・ラブ
やだ。やだ……っ。やめて。
お願い、助けて。誰か来て。
ダメだとわかっていても、もう抵抗できる気力もなくて、ギュッと目を瞑る。
こんなときでも、真っ先に頭に思い浮かぶのは大好きな人で。
───颯太……っ!
心の中でその名前を叫んだ直後、眩しい光が私とその男を照らした。
「そこで何をしている!」
その光と同時に声が聞こえた瞬間、その男の人は走ってどこかへ行ってしまった。
解放されたはずなのに、手首はまだじんじんと痛む。
「大丈夫かい!?」
駆けつけてきてくれたのが、巡回していた警察の人だというのはすぐに分かった。
照らされたのは、懐中電灯の光。