ロスト・ラブ


久しぶりに会えたこと。私に話しかけてくれたこと。

そのすべてが嬉しいはずなのに、いつもみたいにうまく笑って話せないし、肩をツンツンも背中をポンポンもできなかった。



……でも、ひとつ。

他の男の人と唯一違うのは、恐怖の意味。



颯太には触れられない。


それは、他の人と同じような触れる、触れられることへの恐怖ではなくて。


好きな人に触れられない現実を突きつけられる、触れられて颯太を拒絶してしまう。そうなることが、怖くて怖くてたまらない。


「……颯太には関係ないでしょ」

「っ、は?なんだよ、その言い方」

「颯太は私が嫌いでしょ?奇遇だね。私も颯太なんか大っ嫌い」


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