恋かもしれない
恋に恋している
暖色系の照明が点る室内に、ピアノの柔らかな音色が響く。

アンティーク調のインテリアが豪華さを醸し出すこの部屋で、ドレスを身に纏い綺麗にメイクをした女性たちと、スマートにスーツを着こなした、見るからにエリートな男性たちが集う。

ワイングラスを片手に各々楽しげに会話して、みんな上品な感じの美目麗しい素敵な人ばかりだ。

「私ったら、完全に、場違いだわ」

私、綾瀬奈津美(二十五歳)がいるのは婚活パーティ会場。

〝豪華ヨットでクルージングしながら出会おう!〟なんて、結婚相談所が企画するパーティの中でも、ダントツで人気のあるものに参加している。

毎回女性参加者は大抽選になるらしく、本当か嘘か、常に定員の百倍を超える応募があるって噂だ。

まあそれもそのはず。年に一度しか開催されない上に、男性は一流企業の社員や医者や弁護士ばかりなんだもの。

世の中、上流な男性と出会いたい独身女性は、とても多い。

アドバイザーから聞いてはいたけれど、これほどだとは思わなかった。

あの人もこの人もみんな、まるでファッション雑誌から抜け出して来たようにきらびやかに着飾っていて、雰囲気は本物セレブのパーティだ。

エリートな男性はともかくとして、女性は普通のOLやショップの店員など、一般的な社会人が多いのに、自分が一番綺麗に見えるようドレスアップしている。
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