恋かもしれない
「え? あれってまさか、順番待ちの列?」

二人から少し離れた位置で、整然と並ぶ人たちがいる。数えてみれば十一人も。

ひょっとしてあそこに並べば、私も話せるのかな。

天から光が射してきたかのように、並ぶ列がキラキラと輝いて見える。

やっぱり縁結びのご利益があるのかもしれない。

でも、今まで一秒たりとも松崎さんのところにいなかったのに、いきなり並ぶのはどうなんだろう。

最後尾にいるアイスブルーの子に、図々しいと駄目出しされるかもしれない。

でも! 私はこの上着を返さないといけないし! 今度こそ頑張るって決めたし!

手のひらをぎゅっと握って、ソロソロと歩き始める。

羽織っていた上着を腕にかけて、こっそり最後尾に並んだ。

前にいるアイスブルーの子が怪訝そうな顔をして私を見たけれど、ぎこちなく笑い掛けたら、何も言わずに姿勢を元に戻した。

よかった、決まりごとはないみたいだ。

並んでいると「お話しませんか?」って、横から声をかけてくる男性もいる。

特に前に並んでいるアイスブルーの子に、一番多くの声がかけられてる感じだ。

もしかしたら、一番人気なのかもしれない。

こんな子も並んでいるんだと思うと、心が折れそうになる。

そんな自分を励ましつつ並んでいれば、だんだん順番が近づいてきた。

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