恋かもしれない
***

「おはようございます」

「おはよう。あれ? 奈っちゃんちょっと日焼けしたよね。土日どこかに出掛けたの?」

月曜日、『Lapin noir』に出勤すると、いつも通り庭に水撒きをしていた美也子さんは私を見るなり開口一番にそう言って笑った。

人から見ると、そんなにはっきり日焼けしたと分かるのだろうか。

ちっとも効かないなんて、ダメダメなあの日焼け止めを使うのは、もう止めておこう。

「はい。これでも日焼け止めしていたんですけど、焼けちゃいました」

「例の男性と、デートしたの? プールに行った?」

「プール?? え、や、そんな、違います! デートじゃないです! あ、少しだけ人に会いに出掛けて、その、二時間くらい外を歩いただけなんです!」

慌てて否定すると、美也子さんは笑顔を止めて「なあんだ、そうかあ」とカクッと首を傾げて、水撒きのホースを仕舞い始めた。

仕草もだけど声のトーンも少しおちていて、すごく残念そうだった。

松崎さんとデートだなんて、本を頂いたあの日が最初で最後だと思う。

忙しいお方で暇がないし、そもそも私にはそんな気はない筈なのだ。

だって、その気があれば、Lサポートを通じてアクションがあると思うし、第一婚活パーティの時〝気になる人〟にも名前を書かれなかったのだから、望みはないと思う。

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