恋かもしれない
結婚しても変わらずに気遣いを忘れないなんて、あの優しそうなご主人のイメージにぴったりな感じだ。

やっぱり美也子さんはご主人に深く愛されてるんだなあと、改めて感じる。

「素敵なご主人で羨ましいです」

「あら。奈っちゃんも、そんな人と結婚する可能性が、十分に、あるわよ?」

美也子さんは、十分に、の部分を強めに言ってにっこり笑う。

そうなのだろうか。私は岩田さんとそんな風になれるのかな? 

なんだかピンとこないのは、岩田さんのことよく知らないせいなのだろうか。

岩田さんと会うのは来週末だと決まっている。

アドバイザーの佐藤さんの言う通り、今感じているこのモヤモヤ感も会って話をしていけば、原因が分かってすっきり晴れるのかな。

そして、好きになっていくのだろうか。

恋するって、実際どんな感じなんだろう。

「あの、美也子さんは、いつご主人のことが好きになったんですか?」

「ん~、そうねえ、いつって言われてもピンとこないけれど。スウェーデンから帰国する前日に別れを言った時に〝私、この人が好きだったな〟って思った。で、日本で再会して何度か会ううちに、やっぱりこの人しかいないって思ったの。もう二度と離れたくない、ずっと一緒にいたいって、強く思った。あのときの私は、主人が再び海外に行くと言ったら、迷わずついていったわ。断られても押しかけちゃうくらいに。そのくらい惚れちゃったのね」

美也子さんは照れたように笑うから、聞いている私の方は身もだえしてしまう。

美也子さんとご主人の慣れ染めはドラマチックで憧れる。

恋愛も仕事も美也子さんみたいにしたい。

何のとりえもない私でも、頑張れば美也子さんに近づけるかな。

スウェーデン語をマスターして自分に自信がつけば、少しは魅力的な人になれる?
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