恋かもしれない
実店舗にお客さんが来るなんて半月ぶりくらいだ。大抵若い主婦らしき人たちが仲良しグループで来るのだけど、今日は違っていた。

三十歳くらいの若いカップルが仲良く食器を見ている。ストレートの髪が綺麗な彼女と、背の高い彼氏だ。

彼女は「これ綺麗な色。お義母さん好きそうかな? ね、亮介はどう思う?」と言って藍色の縦じま模様のカップを彼氏に見せている。

彼氏は「彩乃が良いと思えばいいよ」なんて言って微笑んでいる。

物静かな雰囲気でとても優しそうな彼氏だ。それに、とてもカッコイイ。

会話から察するとプレゼントするものを探しにきたみたいだ。

「いらっしゃいませ」

「ブログを見てサンキャッチャーを見にきたんですけど、ありますか? 飾ってないし、ないですよね」

彼女は店内を見回す。

「はい、すみません。サンキャッチャーのビンテージものは品切れしております。ですが、現代ものでしたらお出しできますから、お持ちしましょうか?」

「お願いします。あ、それから食器はビンテージだけですか? 現行品は扱っていますか?」

「扱っているのは、ビンテージが主ですが、現行品もいくつか置いてあります。あちらの棚にあります」

二人の後ろにある棚を指すと、彼女はサッと移動して見始めた。

その華奢な背中を覆うように彼氏が後ろに立って、彼女の肩口から手元を覗きこんでいる。

彼女をすっぽり包み込んでいる感じで、彼氏が何か話しかけると彼女が小声で答えている。

二人とも口数が少ないけれど、なんだかもう雰囲気が熱くて、氷が近くにあったらすぐに溶けてしまいそうだ。

付き合い始めたばかりなのだろうか、見ているこちらが照れてしまう。
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