恋かもしれない
***

週半ばを過ぎた木曜の夜、九時半。

今、外は大雨が降っている。風がとても強くて、部屋の窓には雨粒がバタバタと音を立てて当たっていて、まるで嵐のようだ。

お天気サイトから『豪雨に注意!』のメールが届くほどの激しさで、余程の用事がなければ外出するのをためらってしまう。

松崎さんはどうなんだろうか。今帰宅途中なんだろうか。

それとも、まだ仕事中?

いつもラインをくれる時間はほぼ決まっていて、九時頃までには着信があるのだけど、今日はまだきてない。

松崎さんと繋がって以来、挨拶だけで終わる日もあるけれど毎晩欠かさず会話をしていたから、今夜はどうしてないのか気になってしまう。

お仕事が忙しいのかな。

それとも誰かとデートしているのかな。

それともスマホの充電切れ?

こんなときって、世の女子たちはどうしているんだろう。

やっぱり自分から『こんばんは。今何してますか?』なんてメッセージを入れるんだろうか。

「どうしよう」

着信音の鳴らないスマホをじっと見ていると、モヤモヤとした雲が胸の中に広がっていく。

岩田さんとのことで感じたのと似たようなモヤっと感だ。

「なんなの、これ」

習慣になりつつあることがないから、ぽっかり予定が空いてしまって変なのだろうか。

じゃあ、ラインしたら少しはすっきりするのかな?

ラインを開けば、昨日の『おやすみなさい』の吹き出しで終わっている。

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