恋かもしれない
始まりはいつも松崎さんからだけど、今日は私からしてみようか。

忙しいのに迷惑だなって思われるかも。そんな考えが頭をよぎって、躊躇してしまう。

でもそれじゃ、いつまでたってもヘボヘボ女子から進歩しないままじゃないか。

電話じゃないのだ、メールなのだ。

「そう。暇な時に見てもらえばいいのだから、きっと迷惑じゃないはず!」

自分に言い聞かせて、気合いを入れて文字入力欄を出す。

「えと、『こんばんは。お仕事お疲れさまです。おやすみなさい』。これでいいかな。んー、別に変じゃないよね?」

一度で見てもらえるように、言いたいことを全部入れてみた。

ドキドキする。指が震える。でも勇気を振り絞って送信する。

吹き出しが現れた画面を暫くの間見つめるけれど何の変化もない。

貼りついたようになった視線を剥がして、スウェーデン語の本を捲るけれど、ちっとも集中できない。

いつ見てくれてもいいと思えども、やっぱり気になって何度も確認してしまう。

時間は経ってすでに十一時、既読になるのをじっと待っているのに疲れてしまった。

外はいつの間にか風が止んで静かになっている。

窓を開けて確認すると、雨の激しさは消えたものの、まだ止んでいなかった。

しとしとと降る雨が夜更けの静かさを増す。

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