恋かもしれない
「どうぞ、座って待っててください」

背中をそっと押されて促されて、広い部屋の真ん中辺りにあるカウチソファーの隅っこに浅く座る。

くるんと回転している素敵階段、見上げれば高い天井で大きなプロペラがゆっくりくるくる回る。

あれのお手入れって、どうやってるんだろう。

「また、来ちゃった」

ここは松崎さんの高級マンション。

今から、いろいろな約束のうちのひとつ〝スウェーデン語の勉強〟をするのだそうで、松崎さんは別の部屋に教材を取りに行っている。

「綾瀬さん、どれにしますか」

三枚のDVDがテーブルの上に並べられて、一つ一つを手に取って見てみる。

男女が見つめあっているのと、女の人が男の人に後ろから抱き締められているのと、男女が笑顔で横に並んでいるのとあって、裏に書かれているあらすじを読むと全部恋愛映画だった。

これが、教材?

「えーっと?」
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