恋かもしれない
「大丈夫、どれも字幕がありますから。外国語は習うより慣れろだと思います。俺も本を見て勉強する傍らDVDを見て生の会話を繰り返し聞いて発音を確認しました。これはどれも面白いと評判のものです。これを見た後、発音の勉強をしましょうか」

松崎さんはすこぶる真剣だ。だから私も真面目にDVDを選ぶ。

迷った末、ラブコメっぽい内容の男女が横に並んでいる表紙の映画に決めた。

「あの、これ、で」

「了解。部屋を暗くしますよ。その方が観やすいので」

DVDがセットされて、明り取り窓のカーテンが閉められて照明が消されて部屋が暗くなる。

もっと真ん中に座ってと言われて少しだけ移動すると、もっとですと言って腰の辺りを持たれてすっと引き寄せられた。

松崎さんとの間が、五センチくらいしかない。近いっ。

「あ、あの」

「しっ、静かに。始まりますよ」

画面がスウェーデンの美しい街並みを映し出す。

季節は秋、仕事ができる風のイケメンな新聞記者の彼に可愛くてスタイルのいいカフェ店員の彼女。

二人の日常や、やり取りがコメディ風に描き出されててとても面白い。

クスッと笑ったりハラハラしたり、たまに失敗して怒られるけれど仕事に恋に頑張る彼女の応援をしながら字幕を追ってると、画面の中がだんだんスイートな雰囲気になってきた。

路上で彼が彼女を抱き締めてキスしている。

展開はとても素敵で、彼が情熱的で彼女もうっとりしていて幸せそうでいいけれど、どうにも隣の存在が気になりはじめた。
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