恋かもしれない
画面の中の二人は、とうとうベッドの中へ。

彼女が甘い声を出して、荒い息とリップ音が何度もして、ベッドが激しく軋んで……。

やだ、どうしよう。

このラブシーンがすごく長く感じる。

松崎さんは、どんな気持ちでこれを観ているんだろう。

じわっと汗が出る。そわそわする。

松崎さんが少し身動きするだけで、心臓が喉まで上がって体に力が入る。

それに今気付いたけれど、松崎さんの腕が背もたれの上部に乗せられていて、私の右肩の辺りに手がたらりと垂れていた。

こ、これは、どうすれば。

密室の中に二人きりでラブラブなシーンを観るなんて……お、男の人って、男の人って、こんな時は……。

こんな雰囲気の時は……。

おかげで字幕に集中できない。

少しでも動けば、松崎さんの手が右肩におりてきそうで、妙に意識してしまう。

『俺は紳士なつもりです』
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