恋かもしれない
そうだ。実際そんなことはないだろうと思う。

けれど、どうにも画面の中と自分の状況がリンクしてしまう。

かちんこちんに固まり微動もできないまま画面を睨んでると、DVDがエンドロールに変わっていた。

二人が結ばれたシーンは、終盤だったらしい。

リモコン操作して立ち上がった松崎さんが部屋の中を明るくしていくと、漸く体の緊張が解けてきた。

ふーと息をついて体の力を抜いていると、松崎さんが話しかけてきた。

「綾瀬さん、どうでしたか?」

「あ、お、面白かった、です。彼女、すごく、可愛かったなって、その、一生懸命で、素敵でした」

「一生懸命か。そうだな、いいですよね。俺もそんな人を知っていますよ。その人は出会った時から一生懸命だった。可愛いと思っていますし、尊敬もしています。その人の言動一つで、焦ったりします」

「そ……そんな素敵な人が、いるんですね」

「ええ、勿論です」

そうはっきり言う松崎さんの瞳はとても優しくて、その人を思い浮かべているのだろうと思える。

なんだか、胸がちくんと痛い。

エリートの松崎さんが尊敬しているくらいだから、きっと仕事のできる綺麗な人なんだろう。

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