恋かもしれない
やっぱりLサポートで出会ったのだろうか。

それとも仕事で出会った人なんだろうか。

顔も知らないその人に憧れてしまう。

羨ましいとも、思う。

「珈琲飲みましょうか。一休みした後、発音の勉強しましょう」

「あ、あのっ、これ!」

部屋を出ていく寸前の松崎さんを止める。

振り返った松崎さんに紙袋を渡すと、少し戸惑ったような素振りをした。

「そ、それ、今日、作ったんです。あ、ジンジャークッキーです。嫌い、ですか」

松崎さんがどんな表情をしているのか、見るのが怖くて顔を上げられない。

今だ!って、勢いで渡してしまったけれど、素敵な人がいる宣言のあとにこんなの渡されてもって、困ってるかもしれない。

「クッキー、わざわざ作ってくれたんですか?」

「はい、それくらいしか、できなくて。初めてで、何がいいか、分からなくて、すみません」

「参ったな。綾瀬さん、これ反則です」

「え?」

反則って、やっぱりこんなことしちゃいけなかったのだろうか。

なんだか哀しくて涙が出てきそうになってグッとこらえる。

泣くなんて、それこそ大反則だ。

「あ、それなら、捨てても、いいので」
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