恋かもしれない
「はあぁ良かった。焦った」

落としたら大変だ、まだ体が震えている。

でも今の声、外まで聞こえちゃったかな。どうしよう、何かあったの?なんて店に入ってくるかもしれない。

そうしたら、私はどんな顔をすればいいのだろうか。

いや、見間違いかもしれない。ただのそっくりさんかもしれない。世の中似ている人が三人はいるって言うし。

深呼吸をして気を落ち着けたあと、オブジェを落とさないようしっかり抱えて、棚の陰に隠れながらそっと外を覗いてみる。

良かった、三人で話をしていて店の方は気にかけてないみたい。

背中を向けたご主人の隣にいる人、背が高くてサラサラな髪に秋風を運んでくるようなすっきり爽やかな立ち姿。

ちらちら見える横顔……どう見ても間違いない、松崎さんだ。

「何で? どうしてここにいるの?」

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