恋かもしれない
「そうなの。主人が会社で一番親しくしてる人で、家でもよく彼のことが話題にのぼるのよ」

美也子さんはますます笑顔を強めた。

「あ、あの、その、え~っと」

「なあに? 奈っちゃん、どうしたの。何か他に聞きたいことがあるの?」

「い、いいえ! 何も! 特に! 全然! お構い無く! 掃除の続きしてきます!!」

オブジェをぎゅっと抱き締めて、美也子さんのにこにこ笑顔攻撃から逃げ出した。

「なんてことなの」

世間って意外に狭い。

まさか、まさか、まさか、松崎さんが美也子さんのご主人と同じ会社だなんて! 

しかも一番親しいだなんて!

松崎さんの、どんなことを家で話しているんだろう。

私の知らないこと、たくさん知っているんだろうな……。
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