恋かもしれない
「朝だ!」

がばっと起き上がって、ピピピピピピと煩く鳴り響くアラームをわたわたと止めた。

「なんて夢をみるの、私ったら」

でも、いいところだったな……。

「うわぁ、やだ!! 何考えてんの!!」

枕を抱きしめて、ひとしきりもだえる。

こんなの初めてだ。

夢なのに感覚がとってもリアルで、思い出すだけで顔に熱が集まるのを感じる。

きっと、昨日、生の松崎さんを見たからだ。

さらに、昨夜はビデオ通話で発音レッスンもして、土曜の出来事をありありと思い出してしまったのも原因の一つ。

あの時の松崎さんのてのひらから伝わってくる温もりが、今でも頬に残っている。

真剣だけれど優しい瞳も、目に焼き付いていて。

あのときの松崎さんは、今見た夢みたいなことをしようとしていたのだろうか。

つまり……キス……を。

でも松崎さんには思う人がいるのに、どうして?

『つい、我を忘れて』
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