恋かもしれない
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可愛い鳥の声が聞こえる爽やかな朝。

ベッドから起きだしてカーテンを開ければ、空は目が覚めるように青くて、今日も良い一日になりそうな予感がする。そう、普段ならば。

「なんて顔してんの……」

洗面台の鏡の中には、目の下にくっきりとクマがあり肌もカサカサなヒドイ顔の私がいる。

おまけに体が重くて頭痛もするし、こんな日はどこにも出掛けず家でゆっくりと休みたくなる。

しかし。名刺とにらめっこして松崎さんの行動の意味に悩んで寝不足だろうと、婚活パーティで失敗して地の底まで気分が沈んでいようと、必ず日は昇り、変わらない日常がある。

まるでセレブパーティのようだったアレも高額な参加費用だった上に独り暮らしな私は、働かねば生活ができない。

職場を転々としてようやくゲット出来た事務系のお仕事、どんな顔であろうと最悪な体調であろうと行かなくてはならない。

頭痛薬を飲み顔色の悪さをメイクで誤魔化して、職場である雑貨店に向かう。

路線バスから降りて徒歩十五分、繁華街から遠く離れた緑多い場所に、ドイツの住宅のような可愛い家がある。

美しくガーデニングされた庭と小さな駐車場があって、ぱっと見ペンションのようなここが、私の職場だ。

駐車場から庭を覗けば、水を撒いている人が目に入る。

初夏の陽射しを受けてキラキラと光る水飛沫が、小さな虹を作ってとても綺麗だ。
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