恋かもしれない
外を見れば雲が薄くなって空が明るくなってきていた。

ブラウスも渇いてきているし、今なら電車に乗れる。

帰るなら今しかない。

「あ、あの、私、帰ります。ありがとうございました」

「え、綾瀬さん! ちょっと待て!」

玄関を出る寸前、バンッ!! とドアを叩く音がして、肩をgシッと掴まれて止められた。

岩田さんと玄関ドアの間に閉じ込められて、身動きできない。

怖い。

何をされるのか分からなくて怖い。

どうしよう。

脚が震えて座り込みそうになるのをグッとこらえて、身を縮めるように鞄をぎゅっと抱きしめた。

「か、か、帰り、ます。手を、離して、ください」

「綾瀬さん、誤解しないでください。大丈夫、何もしません。というか、これだけ警戒されたらできませんよ。駅まで送っていきますから」

「いいです。ひ、ひとりで帰ります」

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