恋かもしれない
「おはようございます」

「おはよう、奈っちゃん。今日は暑くなりそうね」

栗色の長い髪に黒いエプロン姿。

歳は三十二歳で、既婚。上品な笑顔を向けてくれるこの方が、オーナーである橘美也子さんだ。

雑貨が好きで集めているうちに譲って欲しいと言われるようになって、自然な成り行きで店を始めたと聞いている。

お店も、自宅を改装して作ったと聞いた。

好きなことが仕事になって成功するって、素敵なことだ。


店の奥にある事務所に入り、早速パソコンを立ち上げてメールチェックを始める。

「あ、たくさん来てる!」

受信トレイに次々と積み上げられた新着のうち、オーダーの件名は九割を占めている。

これは全部、この土日休みの間にウエブショップから入ったもの。

ショップにログインしてアクセス数を確認すると、金曜夜からの来店者が前日に比べて約五倍に増えていた。

やっぱり新着コーナーとブログを更新すると、お客様の反応がいい。つい最近入荷したものがほとんど売り切れている。

全部が、オーナー自ら現地まで買い付けに行ったものだ。

「美也子さん、喜ぶだろうな」

品物が売れると、私も嬉しい。
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