恋かもしれない
逃げて、お願い、逃げて。そ

こにいたらダメッ。

体が震える。

うまく呼吸ができない。

叫びたいのに声が出ない。

誰かっ、ま、松崎さんっ!

半ば意識が朦朧とする中で、ガタガタと震える指を必死に動かしてラインのビデオ通話ボタンに触れた。

「た、た、たすけ、て……おねが、い、たす、けて」

『はい。松崎です……綾瀬さん?』

「たす、けて」

『え? 綾瀬さん! どうしました!? 綾瀬さん!?』

スマホの中の松崎さんが霞んで見える。

「た……す、け……て」

必死に絞り出した自分の声を聞いたのを最後に、意識はぷっつりと途絶えた。
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