恋かもしれない
『おら! ここにいることわかってんだぞ!! 開けろ!!』

ドン! ドン! 玄関ドアを激しく叩く音がする。

『奈津美はここに隠れてなさい。絶対に出ちゃダメだからね』

『おかあさん、こわいよ。やだ、いっしょにいる。やだ』

『ダメ! いい子だから。お母さんがいいって言うまで出ちゃダメ。ね?』

押し入れの中に入れられて、襖がすーっと閉じて、暗闇になった。

『おかあさん……おかあさん……』

ガシャーン! 

何かが割れた音がして、壁にピターッと体を寄せて、ぎゅーっと身を縮めて耳を塞いだ。

でもいくらぎゅーっと塞いでいても、指の間から言い争う声と暴れる音が聞こえてきた。

ダメだ、聞いたらダメなんだ。

ここから出たらダメなんだ。

一生懸命耳をふさいでいると、そのうち変な臭いがしてきて、静かになった。

でもお母さんが来ない。

またドタバタと騒がしくなって、スラッと襖が開いて、眩しい光が射し込んできた。

逆光で顔がよく見えない。

お母さん?

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