恋かもしれない
***

『じゃあ綾瀬さん、god natt! いい夢を』

「はい。god natt! ありがとうございました」

スマホに向かってお辞儀をして、ラインのビデオ通話を終了させ、ふーっと一息つく。

日曜のことがあってから、松崎さんは毎晩ビデオ通話をしてくるようになった。

用事は勿論スウェーデン語のレッスンだけれど、変わったことはありませんか?と最初に必ず聞いてくれるのだ。

ありませんと答えると勉強に入る。おかげで随分本のページが進んで、発音も上手になった。

挨拶をスウェーデン語でしてしまうくらいだもの、私ったらすごい進歩なのだ。

クッキー美味しかったって言ってくれていたから、また何か作ってプレゼントしようかな。

今度は何がいいだろう。そう考えるのが楽しい。

生徒が先生にお礼するんだもの、おかしくないよね?

症状がぶり返してしまって毎日に不安があるけれど、北本病院に通院するようになって、薬はお守り代わりに常に持ち歩いている。

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