恋かもしれない
トクントクンと鳴る胸をぎゅっと押さえて俯いていると、背中を優しく摩られた。

佐藤さんだ。いつの間に隣に来たのだろう。

「まあまあ綾瀬さんったら、とってもわかりやすいわ。その方は本当に素敵なんですねぇ。今、恋する女の目をしています。岩田さんのことを話していた時とは全然違いますよ。とても綺麗です」

「綺麗……私が?」

「はい。潤んだ目に艶々な肌と血色のいい唇。恋をすると女は美しくなりますよね。それは相手のことを想う気持ちが、内面から滲み出てくるからだと思います」

まるい顔を優しい笑顔で埋めて、私を見る佐藤さんはそのまま言葉を続けた。

「今の綾瀬さんに見つめられたら、あまりの愛らしさに、お相手の方はイチコロです」

「私……恋を、してる」

「綾瀬さんったら、本当に、今気付いたんですか? ああでも、もちろんその方は会員さんではないですよねえ、残念です~」

「あ、あの、違うんです。実は、知り合ったのはクルージングパーティで、会員の方なんです。その時は、相手の方も私も、残念な結果だったんですけど。だから……」

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