恋かもしれない
***

『綾瀬さん? 珍しいな、今日は集中力がありませんね。どうかしましたか』

スマホでのビデオ通話中、画面越しに見る松崎さんの表情が、心配そうに曇る。

どうして、こんな風に優しく接してくれるの。

これじゃ勘違いをして、ますます好きになってしまう。

そんなのダメなのに。

「あ、あの、どうしてかなって、思って」

『何がですか? どこか分からなかったんですか? さっきの単語?』

「あ、違うんです。どうして、その、親切に教えてくれるのかな?って。あの、すごく、今更なんですけど」

『分かりませんか?』

「はい、全く」

『どうして、か。そうだな……俺が、綾瀬さんに、教えたいと思った。それだけじゃいけませんか?』

「いえ、そんなこと、ないです」

それだけ。

そうか、最初に教えるって約束したからなんだろう。

松崎さんはとても責任感が強い人で、他には理由がないんだ。

『それに実は、俺にとってもいい復習になっていて助かっているんです。一人じゃ、しなかったかもしれません』

復習で、助かる? それって一体どういうことなんだろうか。

ただ黙って見つめていると、松崎さんはぎゅっと引き結んでいた唇を緩めた。
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