恋かもしれない
それに引き換え、私が着ているものといったらレンタルで調達した紺色のドレスで、ここぞ!と本気で勝負に来ている人たちとは完全に差が出ている。

意気込みも綺麗さも積極性も。

いや、意気込みだけは、私にもあったはずなんだけど。ついさっきまでは。

人気のある男性のところには沢山の女性が集まっていて、まるで某TVのお見合い番組をリアルに見ているかのよう。

みんな、少しでも良いお相手と巡り会おうと必死なのだ。

そんな中、私は一人で壁際の椅子に座って、飲めないお酒をちびちびと舐めている。

決して、好みの男性がいないわけではない。

事前に配られた参加者のプロフィールの中で、しっかりと、気になる人を見つけているのだ。

三十歳以上の男性が多い中で、二十八歳と年が近く、優しそうな笑顔の人。

名前は、松崎英太さん。

まさにそのお方が、二メートル程先のところでひとつの塊を作っているのだ。

群がっている女性たちをざっくり数えれば、二十人はいる。

私は、我先にと、アピール合戦を繰り広げているあの中に混じっていく勇気がない。

あんなにライバルがいれば、何も話せないまま、ぼーっと電信柱みたいに立ち尽くして終わってしまうだろう。

私、何でここにいるんだろう。何で来ちゃったんだろう。完全に浮いている。

帰りたい。帰っちゃダメかな。……って、無理だよね、外は海なんだもの。

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