恋かもしれない
「あっ、いえ、私こそ、ですっ」

「ね、奈っちゃんは今から家に帰るとこなの?」

「はい。でも傘持ってなくて、どこかで時間つぶそうかなって、思ってるところです」

「急に降ってきたものね。私たち、今から映画を観に行くとこなの。よかったら、私の傘使う?」

「え、でもそれじゃ、困るんじゃ」

「いいのよ。私たちは相合傘するから」

ね?と同意を求めて見上げる美也子さんに橘さんは頷いて、私の方を向いた。

「どうぞ、使ってください」

「……はい」

お礼を言って差し出された傘を受け取ると、美也子さんたちは改札口へと歩いて行く。

手を繋いでホームに上がってく二人は、らぶらぶな感じでとても素敵で、ますます憧れてしまう。

あのお方と美也子さんの赤い糸が繋がっていたんだ。

私の赤い糸は、どんな人と繋がっているんだろう。

私もいつか、あんな風に、好きな人と肩を並べて歩けるのかな。そうなりたい。

バサ、と音を立てて傘の花が開く。

激しく降る雨の中、一歩を踏み出した。

私、もっと、強くならなくちゃ。
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