恋かもしれない
撮影を始めて約一時間半、全部のアイテムを撮り終えた時には、すっかり肩が凝ってしまっていた。

大量入荷した時は数日に分けて撮る。ウエブショップでは重要な作業だ。

リファーを片付けて肩をくるくる回していると、美也子さんがすまなそうな顔をした。

「いつもごめんね。リファーを固定するスタンドはあるんだけど、使い勝手が悪くて」

「いえ、大丈夫です。撮影助手も楽しいですから」

ウエブショップの更新は基本的に月に二度、隔週金曜にしている。

それまでに到着した商品を撮って画像加工し、非公開でショップに情報を入れておいて金曜の夕方に一気公開するのだ。

だから今撮った分は、明日中に上げておかないとならない。

十七時の帰宅前、お手洗いを済ませて事務所に戻ると、美也子さんが私の鞄を指差した。

「奈っちゃん、さっきスマホのバイブが鳴ってたわよ」

「はい。ありがとうございます」

『Lサポート』の佐藤さんからかな? 岩田さんとのお見合いの日取りは、既に聞いているけれど、予定変更の知らせかな。

鞄からスマホを取り出して画面を確認すると、心臓がドクンと脈打った。

「ま、ま、松崎さん!?」

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