恋かもしれない
もう、忘れられていると思っていた。

「え、何、何? 奈っちゃん、例の経営コンサルタント?」

「あ、はい。そうです、けど――」

これって、折り返した方がいいのだろうか。

もう一度掛かってくるのかな? 

掛かってこなかったら、これでおしまい?

「電話してみたら? もしかしたら、今夜のデートのお誘いかもよ?」

「デデデ、デート!? や、やだっ、そんなはずないです!」

思い当たるのはスウェーデン語の本を頂く用事だけだ。

デートだなんて、そんな――。

どうしたものかと思いつつスマホを睨んでいると、ブブブブとバイブが鳴りだしてびっくりし、また放り投げそうになるのを必死で堪えた。

発信は、松崎さんだ。意を決し、深呼吸を一つしてスマホを操作した。

「はい。綾瀬、です」

『松崎です。すみません、今忙しいですか?』

「い、いえ、大丈夫、です」

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