恋かもしれない
嫌っているわけじゃない。むしろ、好きになりたい、好かれたいって思っているのに。

それでお互い好きになって、手をつないでデートして、夜景を見たり、映画を見たり、キスしたり、それ以上のこと、したり! 

時々喧嘩して仲直りして、それでますます愛を深めたりして。そんなのがいいなって思う。

二十五歳にもなるのに、ドラマとか小説みたいな恋に憧れているのだ。恋に、恋している。

それを、今年こそは現実にしたい!って、縁結びで有名な神社に初詣に行ったのに。

お賽銭だって弾んだのに。

おみくじだって、大吉引いたのに。

だから、今年こそって思って、この企画にも応募して──。

「でも。この性格治さなきゃ、一生恋なんて無理だよね」

遠くにチラチラ光る町の明りを見ていると、何だか虚しくなってくる。

チャンスを貰っても、生かさなきゃ意味がない。どうしてこうなんだろう。

柵に体を預けてへこんでいると、足音が聞こえてきた。

他にも甲板に出ている人がいるんだ。早々のツーショット、なのかも。

「すみません、大丈夫ですか?」

「は?」

気遣わし気な男性の声が、背後から聞こえてきた。救護係りの人なんだろうか。

「は……はい。もう――あっ!!」

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