恋かもしれない
***

そして再び車に乗り、連れて来てもらった場所は……。

「どうぞ、座っていてください。今持ってきますから」

部屋の中心に置かれた三人がけの黒いカウチソファーを指差して、松崎さんは別の部屋に入っていった。

すすめられた通り、ソファの端っこに浅く腰掛けて、部屋の中をきょろきょろと見廻す。

黒っぽいインテリアに統一されて、綺麗に片付いたお部屋だ。

広すぎるせいなのか、展開についていけないせいなのか、男性の部屋だからか、とにかく落ち着かない。緊張してお尻がむずむずする。

「か、帰りたい、かも」

ここは松崎さんの家。

レストランを出てすぐ高速に乗って辿り着いたのがここで、私には理解できないくらいの、とんでもない高級なマンションだ。

最上階。見上げれば、吹き抜けになっているリビングの天井で、大きなプロペラみたいなのがくるくる回っている。

あんなの、カフェでしか見たことない。

部屋の隅っこには、ロフト用の梯子なんかじゃなく、くるんとまわる素敵な螺旋階段がある。

傍に観葉植物が置いてあったりして、とてもお洒落だ。

こんなの、ドラマでしか見たことない。

一体幾つお部屋があるのだろう。

こんなところに一人で住んでいるなんて、なんだか勿体無い気がする。

私のアパートのお部屋は1LDKで、バストイレ全部合わせても、このリビングくらいの広さしかないだろう。

経営コンサルティングって、すごく収入がいいのかな。なんだか住む世界が違う。
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