恋かもしれない
振り向けば、係りの人なんかじゃなかった。

心配そうな表情をしているのは、さっきまで眺めていた、参加者の『会社員・松崎英太(二十八歳)』さんだ。

そう、あのプロフの人だ! どうしてここに?

「え? は? あ?」

言葉にならない声を出し、わたわたと手を左右に振りながら後ずさりをすると、背中が柵に当たった。

逃げ場を失ってしまった私は、こくんと息を飲みつつも松崎さんを見つめてしまう。

背が高くて、顔が小さい。こういうのを八頭身っていうんだろうか、モデルみたいだ。

夜風にサラサラと髪が靡いていて、近くで見るとプロフの写真よりもずっと素敵に見える。

どうしてこんな素敵なお方が、婚活パーティに参加しているんだろうか。

一人なの? 女性が群がっていた筈じゃ?

彼の後ろを見ても誰もついてきていなくて、ツーショットでもないらしい。

どういうことなんだろうか。

「綾瀬さん、ですか。突然声をかけてすみません。先程、御気分が悪そうにしてましたので、少し気になりまして。救護係りが来ていたでしょう」

「は、あ、い、いえ、だ、大丈夫ですっ、もう治りましたから。あのっ、すみませんっ」

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