恋かもしれない
「うん、そうだな……綾瀬さんのスマホにはライン入ってますか」

「ラインですか? 入れてない、です」

「じゃあ、始めましょうか、俺と」

「え?」

「俺が、教えます。ラインがあれば無料通話もビデオ通話も出来ますから、お互いに負担なく、発音も分からない部分も教えられます。それに、会う約束も簡単に出来ます」

「え、で、でも、松崎さん、お忙しくて、ご迷惑では」

「だから、ラインなんですよ。一番手軽で便利なコミュニケーションツールだと思います。これを良い機会だと思って入れてください」

ダウンロードをすすめられてユーザー登録をし、あれよあれよと言う間に松崎さんと繋がってしまった。

使い方を説明されてトークルームに入ると、吹き出しに『これから、ヨロシク』と書き込まれている。私も『宜しくお願いします』と書いて送信した。

***

「今日は、ありがとうございました」

「では、また連絡します。綾瀬さんも連絡ください」

松崎さんは窓を閉めて、静かなエンジン音を鳴らして夕暮れの道を帰っていく。

結局、本は松崎さんが選んでくれて、しかも、アパートまで送ってもらった。
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