恋かもしれない
そうしたら、「うんうん」とか「えー!?」とか「それ、すごーい!」など、バリエーションたっぷりの相槌をうちながら聞いてくれた美也子さんは、話し終えた私の肩をぽんと叩いた。

「奈っちゃん。これは、大変よ?」

「た、大変って、なにが、ですか?」

私をまっすぐに見る美也子さんの目は、キラキラと光りながらもすこぶる真剣なものだ。

大変というのは、昨日の私は大きな失敗をしたのだろうか。

「なにがって。そうね、私が思うには……」

「お、思うには?」

「そう! 彼へのお返しは、ボールペンとか、ネクタイピンなんかより、まったく別のものがいいわね!!」

「は、別のもの、ですか?」

「そうよ。しかも、奈っちゃんの場合は、じ~っくりと時間をかけて、ゆ~っくり決めたほうがいいわね! 彼も待ってくれると思うわ!」

ポンポンと肩を叩いてくる美也子さんは、さっきとは違って満面の笑顔だ。

待ってくれる?? 

それって、どういうことなのか、いまいち意味が分からない。

「は、はいっ? ありがとうございます」

じっくり、ゆっくり決める。

そういえば、そうかもしれない。

松崎さんは、私なんか想像もつかないような超高収入で、何でも持っていそうだから。

お返ししなくちゃいけない事がたくさん増えてしまったし、名前入りのボールペンよりも、もっと良いものを選ばないといけない気がする。

これから何とかして、欲しいものとか、好みとか、ちゃんと聞き出さなくては。

ラインで繋がっていることだし、そう難しいことじゃないはずだ。頑張らなくちゃ。

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