恋かもしれない
***

その夜。食事を済ませた後、早速スウェーデン語を勉強するべく本を出す。

せっかく戴いたんだから、難しくてもマスターするのだ。

そして、ペラペラ喋れるようになって、北欧からの電話に失礼がないようにするのだ! 

それで、いつか美也子さんと一緒にスウェーデンに行くのだ!

「よし、やるぞ!」

気合を入れて、戴いた本のうち雪景色が美しい表紙を開いてみる。

松崎さんは『この本から始めましょう』と言っていたのだ。

ぱらぱらめくってみれば、中学英語の教科書みたいに『これは、ペンです』とか『私の名前は○○です』というような短くて簡単な文章が載っている。

「これなら、私にもできるかも!」

この本には書き込みやマーカーがなくて、ページをめくった痕跡もない。

もしかしたら、一度も開いてない本ってこれのことかもしれない。

買ったはいいけれど、あまりにも簡単すぎて止めたのかな。

松崎さんって、かなり頭がよさそうだ。

『綾瀬さん、先ずは、挨拶の言葉を覚えましょうか。どこの国でも基本は挨拶ですから』

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