恋かもしれない
夢野書店前に人が立っているのが見えるけれど、女性が一人だけで男性の姿がない。

「あのお方はLサポートの人とは違うのかな? まだ二人とも来てないのかも」

近付いて行くと、女性が小走りに寄ってきて声を掛けてきた。

「綾瀬奈津美さんですね。私、Lサポートの唐沢と申します。よろしくお願い致します。今日は私がしっかりサポート致します!」

ストレートの髪をさらりと揺らして頭を下げた唐沢さんは、細身で三十歳くらいに見える。

綺麗で優しい笑顔のとても感じのいい人だ。

「はい。よろしくお願い致します」

「では早速移動致しましょう。岩田さんがお待ちです。こちらです」

天気のこととか当たり障りのない雑談を交わしながら歩く道の両脇は、住宅が建ち並んでいてお店らしきものは一軒もない。

こんな奥まったところに、喫茶店があるんだろうか。

「あ、綾瀬さん見えてきました。あそこです!」

入り口が近付いてくるにつれて、だんだん緊張してくる。

「岩田さんは先に中でお待ちです。綾瀬さん、どうぞ」

小さなベルの音を鳴らしたドアを持ったまま、唐沢さんが中に入るよう促してくる。

「は、はい、あ、ありがとうございます」

そろそろと中に入るとひんやりとした空気が太陽で火照った肌をなでて、じんわりとかいていた汗が一気に引いていく。
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