恋かもしれない
「そう。それにですね、あちらでは飲みものを頼めば、常に小袋に入った豆菓子や小さなカップケーキなんかが付いてきます。独自の喫茶文化を持ってますね。他の県も独自の文化を持っているかもしれない。いつか全国の喫茶店めぐりをしたいと思ってるんですよ」

余程好きなのだろうか、喫茶店文化を語る岩田さんは心底楽しそうだ。

それに流石に学校の先生なだけあって、お話がとても上手で引き込まれてしまう。

聞き入っていると店員さんが「ご注文はお決まりですか?」と訊いてきた。

飲み物を頼むと、店員さんがメモを取りながらモーニングはお付けしますか?と訊いてくる。

すかさず岩田さんが二つともお願いしますと答えてしまった。

私に訊くこともなく頼んでしまうなんて、困ってしまう。

緊張していて、とても食べられる気がしないのだ。

「あ、あの」

「すいません、勝手に頼んで。綾瀬さんがお腹いっぱいで食べられないときは、言ってください。僕が食べますから。でも、美味しいんですよここのパンは。お腹すいてなくてもペロリと食べられますよ」

岩田さんのこんがり日焼けした肌に白い歯が覗く。

健康的で人懐っこい笑顔。やっぱり小学校の先生だから、毎日子供たちと一緒にグラウンドを駆け回ったり、プールに入ったりしているのだろうか。

岩田さんはどんな先生なんだろう。
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