恋かもしれない
「あ……おは」
お話をしたいと言いかけた刹那、静かな甲板に靴音と女性の声が響いた。
「ああぁっ!」
硬質な足音を立てながら松崎さんの傍に走り寄ってくる人がいる。
「ここにいたんですかぁ、松崎さぁん。次は、私とお話する約束だったじゃないですかぁ」
肩までのミルクティー色の髪でペールピンクの可愛いドレスを着た姿は、私と同じか年下に見える。
ふんわりカールが可愛くて、いかにも男性にモテそうな子だ。こんな子も、参加しているんだ。
彼女は「イキナリいなくなって、探していたんですよぉ」って、甘えた感じの声を出して松崎さんのシャツの袖を掴んでいる。
「あ、すみません。今戻りますから。綾瀬さん、行きましょうか」
ペールピンクドレスの子は、私に声をかける松崎さんを不満げに見上げた直後、キッ!といった感じでこちらを見た。
松崎さんの上着を羽織っているのを見てとり、ますますムッとした顔をする。目が合うと、つんとそっぽを向いた。
「私と二人でお話する約束だったでしょう?」
唇を尖らせた口調からは、何でこの人と一緒にいるの?という不満が駄々漏れになっている。
松崎さんも扱いに困っているみたい。これって、私のせい、かな。