恋かもしれない
「や、ごめんなさいっ」

立ちあがって急いで拾おうとする私を止めた岩田さんが店員さんを呼んでいる。

落ちたトーストを片付け、新しいのをお持ちしましょうと言う店員さんに断り、椅子に座りなおした。

岩田さんはテーブルの上にころんと転がってるゆで卵を取って、どうぞと渡してくれた。

その少しひび割れた殻をじっと見ていると、唐沢さんが終了時間になりましたと知らせにきた。もう一時間も経ったのだ。

唐沢さんがレジをして領収書をもらうのを待ってから外に出る。

カーッと照りつける日差しが来た時よりも強烈で、あまりの眩しさに目を細めた。

「じゃあ、綾瀬さん。また佐藤の方からご連絡いたしますので、それまでお待ちください。今日はお疲れさまでした」

「はい、お疲れさまでした」

唐沢さんと岩田さんはこれからLサポートに行って話をするのだと言う。

二人に別れを言って家に向かう。

「また、失敗しちゃった……今回も駄目かな。どうしてこうドジなんだろう」

しょんぼりしてとぼとぼと歩いて家に帰りついた頃には日焼けして、肌が赤くなっていた。

ショールを羽織っていたのに、日焼け止めも効かないなんて、今日はすごく日差しが強かったのだ。
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