恋かもしれない
家に帰ればお昼の十二時を過ぎていた。日焼けした腕を濡れタオルで冷やしつつエアコンを付けた部屋の中で落ち着くと、喫茶店でのドジを思い出してまたまたへこんだ。

「でも! 今までのお見合いは話も出来なかったのに、少しは進歩したじゃない!」

そうだ。そうなのだ。今回が駄目だったとしても、きっと次がある! 

いつか素敵な恋ができる!

自分で自分を励まして何とか気分を上げてみる。

これはLサポートに通い始めた頃、佐藤さんから聞いたアドバイスなのだ。

『失敗して落ち込んだらポジティブな言葉を声に出して言ってみるといいわ。少しは気分が上がりますから』と。

船上パーティの時よりはショックが少ない感じだ。もしかしたら、少しずつ気が強くなっているのかもしれない。

「私も成長してるみたい」

冷蔵庫から麦茶を出してきて、食べ損ねて持ち帰ってきたゆで卵の殻をゆっくり剥いているとスマホが鳴っていることに気が付いた。

もしや、もう佐藤さんから連絡が来たのだろうか。

「岩田さんたちと別れて一時間くらいしか経っていないのに」

剥きかけの卵をお皿の上に置いて鞄の中からノロノロとスマホを取り出すと、画面には意外な名前が出ていた。

『松崎英太』

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