恋かもしれない
お皿に乗った剥きかけの卵の殻を見つめながらつらつら考えていると、クスと笑い声が聞こえた気がした。

ぱっと顔をあげると、松崎さんは何がおかしいのか、クククと笑っている。

楽しそうなその笑顔が眩しく見えるのは、外の強い日差しと綺麗な肌のせいだろうか。

だって、男性なのに本当にすべすべの肌をしているのだ。

スマホ越しなのを強みにして少しだけ近付いてじーっと見つめてると、松崎さんが視線を落とした。

『あ、そこ。綾瀬さんの前にあるのは卵ですか』

「は、そう、です。喫茶店で、余りまして。だから、食べようとしていたところ、なんです」

『へえ喫茶店。あ、もしかして喫茶店の余ったものをお昼用に貰って来たんですか? 綾瀬さんは面白い人だな』

「ち、ちがうんですっ。こ、これは、モーニングセットで、卵が残りまして、それを、です」

『あはは。冗談ですよ。そのモーニングセットって、どんなものなんですか?』

少し首を傾げている松崎さんにパンが飛んでしまったことは省いて喫茶店でのことをたどたどしく説明をすると、そうですかと言ってまた目を伏せた。

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