恋かもしれない
「あの、どうか、おかまいなく。お二人でお戻りください。私は、もう少ししたら戻りますから」

「ね? 行きましょ。他のお方もいることですし、お時間がなくなってしまいますぅ」

ぐいぐいと促されて会場に戻っていく松崎さんの背中を見送って、空を仰いだ。

星が瞬く中を飛行機が飛んで行くのが見える。

ちかちか光るそれを流れ星の代わりにして、祈る。

今度こそ、変わるんだ。

折角抽選に当たって来たんだもの、このまま何もしないで帰る訳にはいかない。

頑張らないと! はっきり話す! 緊張は無視する!

頬をペシペシ叩いて気合を入れ直して、会場へ向かおうとしてハッと気付く。

松崎さんの上着を、借りたままだ。

これは、もう一度お近づきになるチャンスだ。

深呼吸を二回して、会場へ戻った。

中に入ってすぐ松崎さんの姿を探せば、壁際にある椅子に座って、ペールピンクの子と談笑していた。
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