影を拾った太陽
その日の夜。



私はキッチンで一人佇んでいた。





お母さんが寝るのを確認してキッチンに行って調味料や食べ物を出したのは良いけど、何を作れば良いのか分からない。
というか、今ある調味料や食べ物で何を作れるのかも分からない。





あ、そういえばお母さんが昔買った料理の本があったよね。





確かリビングの本棚の奥にあったはず……












大きな音を立てないように、そっと本をどかして奥にある料理の本を取った。













料理をできなかったお母さんが、結婚する時に買ったらしい料理の本。



今ではすっかり使わなくなったみたいだけど、この本のおかげで料理をできるようになったんだとか。





だから私も、これを見れば人前に出せるほどの料理を作れるはず!












でも……料理初心者の人がまず作る物って何?







一応『初心者でも作れる簡単料理!』とは書いているところはあるけど、全部難しそうなものばかり。






うぅ、どれも初心者用の物じゃないよ。






だけど、作らずに行ったらまた桐ヶ谷くんにバカにされそうだ。





それはそれで、嫌だ。







必死にページを捲っていると、あるひとつの食べ物に目がいった。






これなら、作れるかも!






ちょっと難しいけど、この中では一番簡単かもしれない。






四苦八苦しながら、何とか作ることができた。







その頃には、もう日が昇って明るくなり始めていた。






そして、キッチンには卵やケチャップとかが無残に散らばっている。






早く片付けなきゃ、お母さんに怒られちゃう!



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