影を拾った太陽
もし愛依が声をかけてくれなかったら、今頃一人でいたかもしれないんだよ?
桐ヶ谷くんとも出会えてなかったかもしれないんだよ?
「光凛。誰かが幸せな時、誰かが不幸になるの。それで社会は成り立っているの。でもね、不幸になった人にも必ず幸せはやって来るの。この世はね、全ての人間がいつかは幸せになれるようにできているの。だから光凛は自分のことだけ考えていれば良いの」
「愛依……」
ごめんね。こんな友達でごめんね。
愛依のために何もできなかった。
「いい加減疲れたの。良い人ぶって、愛想振りまくの。だからこれは、私がこれから素で生きていくのに必要なことだから」
え、誰この子。
これがあの可愛らしい愛依?男の子に可愛らしく笑っていた愛依?
あまりにも目の前のことが信じられなくて、思わず目を見開いた。
「だから光凛は気にしなくて良いよ。それに、もう候補は見つけてあるから」
「え、候補?」
愛依の言っている意味が分からず、思わず聞き返す。
視線の先は誰かを見ているみたいだけど、その先は男子がいっぱいいるから誰のことを見ているのかは分からない。
「好きな人。まぁ、まだ“多分”だけど」
「え!?そうなの!?」
もう好きな人できたの!?
誰だろう!
「ま、まだ言わないからね。付き合えるようになったら言う」
「うん!分かった!」
良かった!
酷いことされたとはいえ、何だか後ろめたい気持ちはあったから。
いつか、私と桐ヶ谷くんと愛依と、愛依の好きな人と四人で笑い合える日が来ると良いな。