影を拾った太陽
一年後。



ついに卒業の日がやって来た。
いや、やって来てしまったと言うべきだろうか。
だって、もうこれから桐ヶ谷くんとしばらく会えなくなるから。
五年、なんて長すぎるよ。



「そんな顔すんなって。言っただろ、絶対戻ってくるって。日本に戻って来たら一番に光凛に会いに行く」



一年前のあの日から、桐ヶ谷くんが優しい笑顔を浮かべる度に胸が痛んだ。もう会えなくなる。五年経てば、もう忘れてしまうかもしれないって。
だけど、今日は笑顔で送り出すって決めた。桐ヶ谷くんが留学を頑張れるように。



「絶対、だよ?」



「あぁ。五年後、俺達が出会ったあの空き教室でまた会おう」



「え、でも……」



もう卒業しているのに入っても良いのかな。
私も、桐ヶ谷くんとまた会う時はあの空き教室が良いなって思っていたけど。



「俺達が初めて出逢った場所だし、それに俺達の一番の思い出の場所、だろ?」



顔を赤くして言う桐ヶ谷くんに、思わず鼓動が高鳴る。
思い出の場所だなんて、そんなこと思ってくれていたんだ。
見た目は不良なのに、桐ヶ谷くんは意外とロマンチストだ。



「光凛。向こうに行っても絶対忘れない。ちゃんと連絡もするし、手紙も書く。だから、お前も忘れんなよ?」



「当たり前じゃない」



ほらね、離れていても繋がっている。



“好き”って気持ちが消えない限り、私達は遠く離れていても赤い糸で結ばれているんだ。
だから、またきっと会える。




私達が出会ったあの場所で。きっと。




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