影を拾った太陽
「え、な、何って……」


桐ヶ谷くんの言った意味が分からず、思わず瞬きした。



何と言われましても、返答に困るんだけど。




髪を掴まれたショックで、まだ脳があんまり動いてないのかな。



「弁当箱返そうとしていただけなのにさ、あんな必死になることなくね?」





……この人、本気で言っているの?
危機感なさすぎなのにも、程があるよ。



もしかして無愛想なのって、自分がモテているって自覚ないから?
いや、でも名前呼ばれてあれだけ歓声浴びていればどれだけ鈍感な人でも分かるよね?




「言わせときゃ良いんだよ。どうせ、あいつらは俺の顔しか見てねぇんだから」




もしかして、桐ヶ谷くんのファンのこと言っているの?



モテている自慢ですか。ちょっとムカつく。




でも、何も言ってないのによく分かったな。
私の考えていること。





「俺の顔しか見てねぇような奴らのこと、何で考えなきゃいけねぇんだよ。俺のこと何も知らないでただ顔が良いってだけで騒いでいる奴らに、興味はねぇよ」


違う。
この人、モテているなりに悩みを抱えているんだ。



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