影を拾った太陽



女子に人気があって今まで苦労なんてしたことないんだろうなとか思っていたけど、桐ヶ谷くんは桐ヶ谷くんにしか分からない悩みを抱えていた。



私、勘違いしていた。
意地悪で性格悪くて、無愛想な人だって思っていたのに、悩みを抱えているんだと分かったらなんか今までのムカつきとかが一気に無くなった気がした。




「お前もさ、もうちょっと堂々としていろよ。別に悪いことしているわけじゃねぇし。それに俺、あいつらのものになった覚えねぇから。お前と俺が仲良くしようが、あいつらには関係ねぇじゃん」




凄い、この人。
我を貫いているって感じ。



私も、こんなに強くなりたいな。




「ま、お前が俺とつるむかどうかもお前次第だから。俺と一緒にいろなんて言わねぇけど」



「え……」




桐ヶ谷くん、私のことどう思っているの?



私が一緒にいたくないって言えば、もう声もかけないわけ?



一緒にいたいって言えば、仲良くしてくれるわけ?
桐ヶ谷くんは、私にどうして欲しいの?



「行かなくて良いの? もう授業始まるけど」



「え、あ……」




確かに時計を見ると、もう昼休みが終わる五分前だった。



初めてだ。
授業に行きたくないって思ったのは。





今、ここから離れたら桐ヶ谷くんともう一緒にいられない。
そんな気がする。




桐ヶ谷くんと、一緒にいたい。
初めてだよ、こんな感情。




「今日は、行かない」





私がそう言うと、桐ヶ谷くんは私をじっと見始めた。




なんか恥ずかしいんだけど。





人にじっと見られるのって、凄く恥ずかしいんだな。





「お前みたいな真面目ちゃんが授業サボったら、後々罪悪感でいっぱいになるんじゃねぇの?」





ふっと笑いながら言う桐ヶ谷くんの裾を掴んだ。




こんなこと、自分が言うなんて思ってもみなかった。




少女マンガのヒロインが言っているのを見て、こんなこと現実では絶対にありえるわけないって。
でも、今は言いたい。
死ぬほど恥ずかしいけど、言わないと気が済まない。





「桐ヶ谷くんと、一緒にいたい」










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