影を拾った太陽
何がカッコイイのか分からなかった。
女子から毎日歓声受けて、私に意地悪なことばかり言って、良いところなんて一つもないって。
でも、私のことを助けてくれて悩みを抱えていることだって分かった。
モテているからって、それを鼻にかけずにちゃんと自分を持っている。
意地悪だけど、仲良くない私を助けてくれる優しいところに何故か心が惹かれた。
一緒にいたいって、思っちゃったよ。
「裾引っ張んな」
そう言って、桐ヶ谷くんは私の手を離した。
離された手が、何だか暖かい。
何、これ。
何でこんなにドキドキしているの?
「俺と一緒にいたいって言うなら、条件がある」
「条件?」
いきなり指を突き付けられて、反応に困った。
今度はどんな条件を出されるのかというドキドキだ。
「毎日俺のために飯作ってこい。それが条件だ」
「はぁ!?」
何よ、その亭主関白な旦那みたいな発言は!
昨日作ってきたからって、調子に乗らないでよ!
昨日作ったのは見返すためで、あんたのためじゃないんだから!
「それが無理なら、俺と一緒にいたいっていう願いは断る」
うっ。
なんか、弱み握られたみたい!
俺様気取らないでよ。
それが許されるのなんか、少女漫画の中だけなんだから。
「どうすんだよ。俺の飯作んの?それとも、俺と一生喋らないの?どっち?」
何だ、この不思議だけど究極の選択は。
桐ヶ谷くんと一緒にいたいって言うと、お弁当を作らなきゃいけない。
だけど、それを断れば桐ヶ谷くんとは一緒にいられない。
でも、あれ?
私確かに一緒にいたいとは言ったけど今後も、とは言ってないよね。
私が言っているのは、今日は一緒にいたいって意味で、何もずっと一緒にいたいわけじゃ……。
って、何心の中で言い訳しているんだろう。
「何も言わないってことは決まりな。明日から楽しみにしているから」
笑っているけど目が笑ってないよ、桐ヶ谷くん。
その笑顔になんか悪意が込められている気がするよ。
桐ヶ谷くん、悪魔の微笑みだよ。
「じゃ、着いてこい」
「え?」
どこに?
聞く暇もなく、桐ヶ谷くんは私の腕を引っ張ってどこかに向かって歩き出した。
ま、まさかとんでもない所に連れて行くつもり!?