影を拾った太陽
桐ヶ谷くんにもし見られて勘違いされたら?
ううん、でも桐ヶ谷くんはきっと成瀬くんと私が一緒にいても何も感じない。
私が感じているようなことを、きっと感じてくれない。
そう思うと、また胸が痛い。
自分で自分を追い込んで、バカみたい。
「ごめん、イジメすぎた。あまりにも光凛ちゃんが正直だからつい」
語尾に音符が付きそうな口調で、成瀬くんは言った。
その軽い感じ、やめてよね。
っていうか
「な、名前呼び!?」
成瀬くんとそこまで仲良くなった覚えないんだけど!?
いや、でも成瀬くんって女子のみんなにこんな感じだから、仲良くなったら名前呼びとかじゃないのか。
いや、だけどそれにしたって嫌だよ。成瀬くんに名前呼ばれるのは。
これも、桐ヶ谷くんに勘違いされるかもしれないと思っているから?
「あはは。やっぱり光凛ちゃんって面白いねぇ」
なんか、バカにされている気がするんですけど。
「一緒に帰ろうよ。やっぱり女の子一人じゃ危ないし。ほら、最近不審者も増えているし」
私からすれば、成瀬くんは充分不審者なんだけど。
でも、悪い人ではない、気がする。関わりたくない人だけど。
「他の女の子と帰れば良いでしょ。成瀬くんなら選び放題じゃない」
わざわざ私じゃなくたって、成瀬くんは女の子から人気だし仲良しだからいつでも誰とでも一緒に帰れるじゃない。
私のことを構う必要が分からない。
「だって、他の子達は友達と帰ったり彼氏と帰ったりしているから一人じゃないでしょ?」
それは、私に友達がいないことを遠まわしにからかってます?
やっぱり、この笑顔には裏がある。
「私は一人で大丈夫。今までだって一人だったし、私みたいな子襲おうと思う人なんて、どこにもいないから」
愛依に彼氏ができてからお弁当だけじゃなく、帰る時も一人が多くなった。