影を拾った太陽
顔を見なければ、怖くない。
でも、この人は違った。
睨む顔じゃなくてオーラが怖いから、目を瞑っても一緒だった。
殴られでもするのかなと顔を俯けて強く目を瞑っていたら、突然笑い声が聞こえた。
え、な、何?
私、何か変なこと言った?
顔を上げると、桐ヶ谷くんが目に涙を浮かべながら笑っていた。
こんな顔、するんだ。
彼が笑っているのを見て、胸の辺りがキュっとなるのが分かった。
知らない感覚に、少し戸惑ってしまった。
「秘密基地って……」
え、それで笑っているの?
そんなに面白いことじゃないよね?
桐ヶ谷くんの笑いのツボが分からない。
「小学生みたいだな」
笑顔を向けて来る桐ヶ谷くんに、また心臓が小さく脈を打つ。
きっと顔が整っているからだ。
なんか、悔しい。
「そんなにこの場所が良いなら、譲ってやるよ」
でも、それは幻だったかのように桐ヶ谷くんはまた冷たい表情で、私を見た。
笑顔は可愛いって思ったのに、やっぱり普段の表情は冷たくて怖い。
「ほ、本当に?」
譲ってくれるのなら、とても助かる。
素直に言うことを聞いてくれたのが、凄く気になるけど。
「あぁ。半分だけな」
「は、半分……?」
やっぱり、素直に譲ってくれるわけないよね。